中島 みゆき(なかじま みゆき、本名:中島 美雪(読みは同じ)、1952年2月23日 - )は、日本のシンガーソングライター、ラジオパーソナリティ。北海道札幌市出身。1975年にシングル『アザミ嬢のララバイ』でデビューした。公式ファンクラブ名は「なみふく」。
128キロバイト (8,118 語) - 2021年12月24日 (金) 18:10



(出典 www.yamahamusic.co.jp)


(笑)

1 Track No.774 :2021/11/07(日) 12:47:44.62

中島みゆきの名曲から物語を作る名曲一日一選マラソン





2 Track No.774 :2021/11/07(日) 20:26:32.73

「あなたでなければ」

「お前の靴ズタボロじゃん。汚ったねぇ」履いているスニーカのボロボロ具合で、
家の事情がばれたのか、地元有力者のドラ息子は俺に目をつけ何かと、毎日ちょっかいを
かけてくる。先生にチクったところで意味はない。もっと酷くなるだけだった。

取り巻きを引き連れたドラ息子は腹立たしいが、本気で憎い裏切者は別にいた。
下駄箱に突っ込まれたゴミを片付け、一路焼却炉に行く。あいつは懲りもせず、毎回同じ場所に
捨てる。校舎裏に回り込めば、案の定、あいつが俺の上履きを持って焼却炉に立っていた。
あいつは高校で初めてできた俺の友達。教室の席も近く、自然な流れで毎日会話する仲になった。

お互い貧しい母子家庭育ち。俺には弟がいて、あいつには妹がいる。お互いに兄貴ということで、
親近感が湧いて「お兄ちゃんって損だよな」「なー」と愚痴をこぼしあっていた。そんな楽しい日々は、
あいつがドラ息子のグループに入ったことで終わりを告げる。今じゃあいつはドラ息子の使いパシリ。
ボスに命令されれば何でもやる。それからの日々は地獄だった。ドラ息子の嫌がらせは日増しに、

エスカレートして行った。物を取られて捨てられるのはしょっちゅうだし、トイレや校舎裏で、
ヤキを入れられることもあった。「ぐうぅ...」「貧乏人が学校へ来るな、とっととやめろ」と、鳩尾を
思い切り蹴られ激痛が走る。ニヤケ顔で脅すドラ息子の後ろで、あいつは卑屈に薄ら笑いしていた。
何度も学校をやめたいと思った。それでも意地と根性で通い続けた。働きづめのお袋や中学生の弟に

心配はかけたくないからだった。俺さえ我慢すればと自分に言い聞かせ、殴る蹴るの理不尽な仕打ちや
陰湿な嫌がらせに耐え続けた。お袋はパートで帰りが遅く、家にいる時間がすれ違っていたので、
何とか上手くごまかせたが、弟となるとそうもいかない。「ただいま」「どうしたの兄貴。泥だらけじゃん」
ぐったりして玄関のドアを開けると、先に帰っていた弟が驚き、頼んでもいないおせっかいを焼いてくる。

「転んだんだ」「でも、怪我もしているし・・・顔のそれ、殴られたのか」「ほっとけよ」「学校で何かあったの?」
食い下がる弟にいら立ちが爆発し、思わず怒鳴り飛ばす。「関係ねえだろ、弟のくせに変な事、気にすんな!」
家で声を荒げる事なんて滅多にない俺の変貌ぶりに弟はびっくりし、しょげ返り「…ごめん」と呟く。
目に涙をためて謝る弟に罪悪感が襲い俺は何も言わずに自分の部屋に引っ込み、枕に顔を埋めて悔しくて泣いた。

高校卒業後、俺は大学へは行かず、地元の自動車整備工場に就職した。親父の作った借金を返すのはもちろん、
弟の学費を稼いでやりたかったからだ。「お前は本当に働き者だな」「お袋は年だし、下には手のかかる弟がいるもんで、
俺が食わせてやらなきゃいけないんで」上司の言葉に笑って返し、エンジンの修理に戻る。毎日オイル塗れになって
車に下に潜り、サボることなど考えず、がむしゃらに働いた。実家の借金返済を目標に仕事に打ち込み、あっという間に

十年が経った。「お疲れ様です。良ければどうぞ」「サンキュー」事務のユキちゃんがくれた缶コーヒーを笑って受け取る。
まだ新人だが、とても気配りが上手な子で、キツイ仕事で汗をかいていると、清潔なハンドタオルをそっと差し出してくれる。
若手が長続きしない職場だったのもあってか、心優しいユキちやんとはすぐに親しくなった。付き合うまでには時間はかからなかった。
何回かのデートでお互いの家族の話になった。最初こそ母子家庭の苦労がわかる者同士話が弾んだが、途中から何か引っかかり

その後に衝撃的な事実を知ってしまう。なんとユキちゃんは高校時代、俺を虐めていた同級生の・・・元親友の妹だったのだ。
あいつの妹。暗い顔で黙り込んでいると「どうしたの?」と身を乗り出して聞いてきた。俺は過去の事を洗いざらし話した。
彼女は泣きだし、謝ってくれた。彼女は相当ショックを受けたらしく、次の日、会社を休んだ。その晩、夜遅くに彼女からメールが来た。

「兄と喧嘩しました。私には、どうしても、あなたが必要です。あなたでなければイヤなんです。あなたでなければ駄目なんです。
似たような人じゃなくて、代わりの人じゃなくて、どうしてもあなたが傍にいてほしいんです」俺も返信を送った。「俺も同じだ」


3 Track No.774 :2021/11/07(日) 20:43:13.32

>>2
下から10行目「車の下に潜り、・・・」に訂正


4 Track No.774 :2021/11/08(月) 09:14:38.32

>>2
下から4行目「俺は過去の事を洗いざらい話した。」に訂正
その「俺は過去の事を洗いざらい話した」の前に「少し言うのをためらったが、」を追加


5 Track No.774 :2021/11/08(月) 22:19:02.96

「海鳴り」

夏の海を見ながら歩いていると浜辺に座ってじっと海を眺めている男の子がいた。
よく見るとその子は隣町の学校の制服を着ていた。
それが彼との出会いだった。「何してんの?」「海見ている」
海に視線を向けたまま彼は答えた。

靴と靴下を*、足だけ波に浸かっていた。
「なんで?」「海が好きだから」そう言ってからやっと顔をこちらに向けた。

「君も好きだろ?」
ドクンと心臓が跳ねた。
「うん、好き」

すぐ隣に置いていた靴をよけて、「座る?」と私に場所を譲った。
そうされると座るしかない。私も、靴と靴下を*、足だけ波に浸かった。
「冷たい」と足をバタバタさせて燥いだ。海水は冷たかった。
彼も私を見て笑っている。大きな波の音が聞こえた。

夕日は水平線に沈んだ。--- 今日の太陽も綺麗だった ---

それから1か月、私は学校が終わってから日没までの間、彼と一緒に海を眺めていた。
第一印象はちょっと変わった奴だった。けれど鼓動は高鳴るばかりだった。
私の中では彼の存在が次第に大きくなっていった。

そんな日々もあっという間に、1か月が過ぎた。そんなある日、別れ際に彼が言った。
「ありがとう」と何故か、礼の言葉を述べた。私にはその言葉の意味が分からなかった。
ただ胸があたたかくなるのを感じた。

「・・・あのさ、俺、いや、やっぱいい・・・ なんでもない」
彼は言いかけてやめた。彼の顔は少し赤かった。
 
次の日、彼は来なかった。 それ以後、彼は来ることがなかった。

――――――――― あれから3週間近くが経った。
― 風の噂では転校して行ったことを知る ―――――――――

海岸から少し離れた場所にある私の家にも迫力ある海鳴りが聞こえてくる。
台風が近づいていて、通常の荒れた波に加え、海全体がうねる圧力のある波が押し寄せてくる。
遠くの海の向こうからグオオォ~~~ と低く唸るような風の音。家の中の吊り戸が換気口などの影響で

カタカタカタ・・・ そして近くも強風になると山側でも、ビューオォーオォ---
窓から見ると波が堤防にぶつかり太鼓よりも低くくドドドオォオォ~~~ン
ザザァヴァ~ン・・・・・・ザザァヴァ~ン・・・・・・

物凄い波が海の中にある防波堤に当たって砕け散っていた 。
波が砕け散った時には破裂したような音がする。
 一晩中繰り返していた ―――――――――


6 Track No.774 :2021/11/09(火) 20:51:09.75

「あのバスに」

あのバスに乗らなけりゃならないと急いでいた。立ちふさがる雨傘を
押しのけて飛び乗った。選ぶほど沢山のバスがあるわけじゃないから、
とにかく、目の前に来たバスに乗る事だけを考えた。

精一杯に急いだと、肩で息を継ぎながら、見飽きた枝の木を駆け抜けて飛び乗った。
外の景色を見る。

バスの行く先も見もせずに急いでいた。あのバスに乗らなきゃと
そして飛び乗ったバスの車内。

「次の停留所は〇〇〇〇」と社内アナンスが… 「しまったあぁー 間違えた! 」

会社の同僚を乗せたバスは軽快に走り去っていく ――――――――― 「あのバスだった!」
--- ああぁぁあぁぁ~~ 遅刻だあぁぁぁぁぁぁぁぁ ---

--- ここで目が覚めた --- 
「あ、夢か」時計を見る。時刻は今、午前8時半。ヤバい。完全に遅刻だ!
今日は遅刻するわけにはいかない。とにかく急いで、パジャマを脱ぐ。
「また課長に怒られる。ヤバいよ! ヤバいよ! もう遅刻しないと約束したばかり。ヤバいよ。ヤバいよ」

ワイシャツをハンガーから取り、慌てて着る。慌ててズボンが上手く履けない。
ズボン履いて、ベルトを締め 「靴下は、靴下は?、あった!」穴あき靴下だ! 

気にしている暇ない。気にせず履き、上着を羽織り鞄を持ち。靴を履き。
マンションを出る。ゴミ出しオバサン、そこどいてと思いながら、焦る焦る。

道行く先の信号、赤が続く・・・正直、イラつく、、、  「あ、あのバスに」もう既にバスは来ていた。
精一杯の走力で走る走る走る 肩で息を継ぎながら 急いでバス停まで向かう。

「待ってー 乗せて」 ――――――――― あのバスに乗らなけりゃならないと急いでた。


7 Track No.774 :2021/11/09(火) 21:13:07.21

「あのバスに」は人生の選択の場面をバスに例えているのか

「選ぶ程沢山のバスがあるわけじゃないから、とりあえず目の前に来たバスに乗る事だけを考えた」と言う事なのだろうか
「後ろが見えなくなる、角を曲がってしまったから 角を曲がり見たものは数え切りない曲がり角だった」

若い頃はあの角を曲がれば、ここじゃなければ次の角を曲がれば、何もかも風景が新しくなるはずだと信じていたけど、
数えきれない曲がり角が見えるだけで、結局はそこそこの人生なのかもしれませんね。

他人を押しのけてまで何とか目当ての出世街道のバスに乗ることが出来たが・・・果たしてそれで良かったのだろうか...
バスが走りだしても、何か大切なものを置き去りに・・・忘れ去ってはいないだろうか・・・
「精一杯に急いだと 肩で息を継ぎながら 押しのけたあの傘の中に自分がいた気がした あのバスに乗らなければならないと急いでいた」


8 Track No.774 :2021/11/09(火) 21:34:08.30

新しい風景を期待して飛び乗ったバスは市内循環バスだった。
新しい風景など無いと知っても、それでも飛び乗らなければならないのだ言いたいのかもしれませんね。
「遠ざかる古い樹は切り倒され」もう後戻りはできない 先へと先へと急ぐしかない。

もう乗ってしまったのだから、もう後戻りできない、行く先が思い描いていたような世界でなくても
とにかく進むだけなのかもしれません。人生も我々のこの世界も言い当てているのかも・・・


9 Track No.774 :2021/11/09(火) 21:56:05.57

>>8
バスに乗らない選択もありかと。最終的には自分の人生は自分で決める。


10 Track No.774 :2021/11/10(水) 17:35:20.00

「黄色い犬」

俺は某取材記者。〇〇事件の真相を追っているうちに、黒幕と思われる人物、
鬼頭勝男がいることを突き詰めるのだが、その取材に関わっているうちに、
上層部から取材を一方的に打ち切られた。

仕方なく取材を終えた後、近くの某有名外資系ホテルのカ*ウンジに入った。
広いスペースにはグランドピアノが置いてあり、落ち着いた雰囲気がある。
ちょうどピアノの生演奏が始まった。

――――――――― 俺の心を癒すように雰囲気のあるスロージャズが流れる。

周りを見回すと、スタイルのいい女性がバーテンダーがいるカウンターテーブルに座っていた。

確かに見覚えがある。そうだ、あの鬼頭の女だった。 
某有名ホテルの豪華絢爛たる大広間で行われたパーティで鬼頭の傍にいた女だった。
目の覚めるような深紅のドレスを着た女がにこやかに立っていた。

ほっそりと気持ちよく伸びた足に首が長く品の良い小作りな顔が似合っていた。
鮮烈な妖しい美しさがあった。

俺の近くのテーブルでは、サラリーマン風の二人が世間話をしていた。
「なんだかんだ言ってもさ、日本はアメリカのいいなりだもんな」
「まあ、確かにそれはあるな。だから誰がなっても一緒という感じはあるな」

「どんなに白く顔を塗ったって中身は黄色い犬っコロだよねって!
そうじゃなくなる日が日本に来るのかね?」

「日本はアメちゃんの妾、愛人の一人(一つの国)に過ぎないのかもね」
「そうだな。いいこと言うね。ワハハハ」「仕方ないさ。わははは」


11 Track No.774 :2021/11/12(金) 08:00:28.74

「世迷い言」

あれは昨年の3月頃のこと。上司に連れられてオカマバーに行った時の話。
何故オカマバーに行くことになったかは飲みの席でのノリだった。

「じゃあ、フィリピンパブか、オカマバーか、どっちがいい??」と
究極の選択を迫られ、こちらとしては、なんかこちらの方が面白い事、
起こりそうやんという感じでオカマバーを選んだ。

オカマバーの客引きやってるオカマが「お姉さんオカマ如何~? 
ポケモンgoじゃなくてばけもんGOよ~ん」とか言ってて思わず笑ってしまった。
上司が「ここがいい。此処にしょう」と言うノリで決めた。

店に入ると、どうも上司が気に入っているキャストがいたらしく紹介された。
その方はもう既に70歳近いその道のプロの方で、御尊顔は笑点の歌丸。
そう歌丸が女装したときの雰囲気に激似だった。

上司が「おう! お前本当に歌丸に激似だな!! 気持ちわりーな!」
「もう、何よ!入って来ていきなり! やめてよー!!」と上司は
その歌丸激似のオカマと初めて来た店と思えないノリのいいやり取りをしていた。

俺の所にはコロチキのナダル似のオカマがついた。
「こんにちはー!! 何なされているんですか~!」「いゃ、会社員ですね。おもちゃ関連の」
「あらま、大人の?」「まいっちゃうなぁ~  違いますよ。子供の玩具ですよ(笑)」そんな感じで始まった。

「あら、ちょっとお兄さん!」「はい?」「よく見ると可愛い顔しているわね。
あなた! あたしのお酒に惚れ薬入れたでしょ!」そこにニューハーフ顔のオカマが、
「あら、ここにいい男いるわ。は~い、いらっしゃ、、、ぶぇっくしょん!!」

「なに、あんた!お客様の前で!汚いわね」「お客様に向けないようにしたでしょ!
花粉症なの…ふぇっくしょん! …あら、いやだわ、突然、くしゃみが止まらなくなったわ」
なんたってオカマだ。迫力のある親父のようなくしゃみをする。

「この子ね。つい最近彼氏に逃げられたの」
「あら、嫌だ! あんた!余計なこと言わないでぇーぇ~ … はぁ…はぁ…はぁ…はぁ、、、
ハックション!!… 大魔王。 呼ばれて飛び出て…ジャジャジャジャーン 
アラビン ドビン ハゲチャビーーーーーーン 」

  


12 Track No.774 :2021/11/12(金) 08:11:21.67

>>11
6行目「お兄さん!オカマは如何~?」に訂正


13 Track No.774 :2021/11/12(金) 08:44:12.54

>>11
下から2行目「大魔王」消去


14 Track No.774 :2021/11/12(金) 11:46:08.35

ミュージックステーション2時間スペシャルは、11月12日20時から放送。 【出演アーティスト】(50音順) ITZY「WANNABE -Japanese ver.-」 AKB48「会いたかった」「根も葉もRumor」 ELAIZA「Close to you」 関ジャニ∞「稲妻ブルース」 CHEMISTRY「PIECES OF A DREAM feat. mabanua」 清水美依紗「衝撃的だったデビュー曲ランキング」第1位の名曲 TOMORROW X TOGETHER「0X1=LOVESONG(I Know I Love You) feat. 幾田りら[Japanese Ver.]」 なにわ男子「初心LOVE(うぶらぶ)」 日向坂46「ってか」 HIROBA with 伊藤沙莉「光る野原」


15 Track No.774 :2021/11/13(土) 12:12:35.07

「眠らないで」

彼がこの世を去りました。病死でした。その彼と出会ったのは7年も前でした。
彼は大学1年生で持病があり、「あと5年、生きられるかどうか」と寂しく笑って
言っていました。それを承知で私たちは付き合い始めました。

観覧車のゴンドラの中から街の景色を二人寄り添って眺めた思い出。
時には、些細なことで言い争ったことも… そして最後には「泣くなよ」と

慰めて抱きしめてくれたことも… 夏祭り、提灯の明かりに照らされた
色とりどりの明かりの道を二人手を繋いで歩いた事も…

        ーーーーーーーーー みんな夢だったなんてことないよね…

彼のお母さんから入院したという連絡があり、私は大急ぎで彼の病室に行きました。
看護師や医師に囲まれたベットで、うつろな目をした彼が居ました。

ぐったりとした彼の青白い手を医師が掴み、脈を取っていました。
その変わり果てた彼の姿に、私は身動きも出来ませんでした。
その傍では目を真っ赤に腫らした彼のお母さんがいました。

横になっていた彼は私に気づき、ゆっくり口を動かしました。
ほんの僅かでしたが、はっきりと動かしていました。
私は急いで彼の口元に耳を当てて聞き取ろうとしました。

「い・ま・ま・で… あ・り・が・と・う…」
僅かでしたが、私には、はっきり聞き取れました。

私は涙が止まらず、何も言えず、手を握り返し、言葉を聞き逃すまいと、
必死で彼の口に耳を当てていました。

とにかく、頭の中が真っ白で、どうしてよいのかわからず ただ手を握り返す
事しかできませんでした。

心の中で ーーーーーーーーー 眠らないで… 眠らないで… 眠らないで…
 
それからどのぐらいの時間が経ったのかわかりませんでした。
突然、それまで不規則に響いていた電子音が、連続音に変わりました。

医師が彼の目に懐中電灯を当て、ゆっくりと「ご臨終です」と言いました。
その言葉を聞いて、彼の母親が声を上げて泣き始めました。
気が付くと私も、そして彼の父親も声を上げて泣いていました。

私は握りしめた彼の手が、ゆっくり確実に冷たくなっていくのを感じていました。


16 Track No.774 :2021/11/13(土) 12:32:07.17

>>15
末尾
私こそ「今までありがとうと彼に感謝している」


17 Track No.774 :2021/11/14(日) 13:52:25.14

「アイス・フィッシュ」

男のやり方は卑怯だと言えば卑怯だし、洒落ていてこの男らしいと言えば、そうかもしれない…

おじさん… そうとてもいいおじさん… そういう顔をしているわ… あなたと出会ったのは去年。
気の合う飲み仲間とたびたび訪れている行きつけのBAR。たまたまその日はひとりで飲んでいた。

馴染みのバーテンダーから、「あちらのお客様からです」それがあなたとの出会いだった。
スキューバダイビングをしているという。海の中の探索は毎回、宝探しているような楽しさがあるという。
毎年沖縄の海にも出かけているという。いつもは、時間があれば東京から日帰りで行ける伊豆にも出かけるという。
そんな会話を交わしているうちに、話も盛り上がり、意気投合している自分がいた。

彼に感化され私もスキューバダイビングを習い始めた。そして彼と行った沖縄の海、伊豆の海。
海の中は今まで体験したことのない夢の世界だった。私も彼と海の中の探索。宝探し気分で楽しんだ。
日中の海の中も、海から上がった夜も、何のためらいもなく彼と一つになっていた。

OLとして将来の事が不安で、絶えず洋服を買うやりくりに悩み、家賃が高いと嘆いていた今までの自分が嘘のようだった。
海の中が楽しければ楽しいほど、現実の世界はうつろになっていく… 誰でもいい仕事… 空っぽの人間関係…
彼からの連絡がなくなった。電話しても仕事が忙しいという。仕事が忙しくて、もう、今までのように、海に行けないとい。

海の中の探索。宝探しはもう出来ないという。仕事が思うようにいかず空回りしていた。ちょうど、そんな時期、
焦るぐらいなら、休んでいようと、一時的に海の中に逃げていたのかもしれないという。

久しぶりで行きつけのBARで会った時の彼は無表情な大人の顔だった。疲れが見えたのは、多分、裕福な生活を送っている
からに違いがない。「ねえ、又、伊豆の海に行こう」と誘っても、彼は「息子が通っている幼稚園の運動会があるんだ」と言う。
「宝物なんか見つける必要なんてなかったんですよね。あなたにはちゃんと家族っていう宝物持っていたんだもん」

男はエリートで平均的サラリーマンより遥かにリッチな生活を送っていた。そんな彼が仕事に行き詰って自分探しを
していた時、私に出会った。そんなこと言われたら、私なんか一体どうしたらいいのだろう… 
 … そして彼と別れた …  

「この熱帯魚、可愛い~」友人の満里奈がそう言って燥いでいる。見たら菱形でモノトーンの縞々模様…
私は友人の満里奈に誘われて葛西臨海水族館に来ていた。淡水魚、熱帯魚、深海魚… ぐるぐる廻る廻る 先へ進む…
私は立ち止った。体の脇の側線以外に鱗が無く、頭部が扁平な形をした透明というかクリーム色した魚が目に止まった。

何という魚だろうと解説を見ると、アィスフィッシュ。コオリウオ科の魚で、成魚の全長は55センチメートル。
最大の特徴は脊椎動物で唯一、血液中にヘモグロビンを持たず、血液が無色透明で赤くないことだった。
稚魚たちの体は透き通っていて、背骨が見える。


18 Track No.774 :2021/11/14(日) 13:58:46.84

>>17
13行目の末尾「海に行けないという。」に訂正


19 Track No.774 :2021/11/14(日) 14:07:46.35

>>17
13行目「そんな日々も長くは続かなかった。彼からの連絡がなくなった。・・・」に訂正


20 Track No.774 :2021/11/14(日) 21:56:11.09

>>17
9行目「私たちは、まるで魚になった気分で泳ぎ回った。私も彼と魚になった気分で海の中を探索。宝探し気分で楽しんだ。」に修正


21 Track No.774 :2021/11/15(月) 10:41:55.44

「エレーン」

私はシンガーソングライターとしてやっと軌道に乗り、シングルもヒットし、
西麻布のマンションに移り住んだ。私は有名人の居宅として騒がれるのを嫌って
麻布の外国人専用マンションを選んだ。

そのマンションに住んでいた外国人モデルの一人、ヘレンとふとした切っ掛けで、
知り合い、時折片言の英語で会話するようになって、非常に仲良くなった。

ヘレンはモデルをしていると言う。髪は金髪に染め、いつも派手な化粧と、身に着けている
洋服はファッション雑誌から切り抜いてそっくり持ってきたかと思うほど洒落たものばかり。
そんな派手な衣装を普段から身に着けていた。端正な顔立ちの華やかな美しい人で、明るく気さくで、

愛嬌があり、ちょっとおっちょこちょいな性格だった。彼女の部屋へ遊びに行くと、モデル業だけ
あって華やかな衣装下着に溢れていた。私たちは会うと楽しく料理をしたり世間話に花が咲いた。
その後、私はコンサートやレコーディングで忙しくなり、暫くヘレンとは顔を合わすことがなかった。

そんなある夜、マンションの共同洗濯室に行くと、そこに独りポツンとヘレンが佇んでいた。
久しぶりに見る彼女の姿に私は嬉しくなって声をかけようとした。しかし、私に気づくとヘレンは
見たこともないような化粧っ気のない青白い顔で一言「… これが、あたしの、普通の顔なのよ…」

ジッと私を見つめて呟いた。いつもの華やかさ明るさは彼女から消えていた。洗濯機の中には、
華やかな衣装の彼女には似合わない白い下着が少しだけ、クルンクルンと回っていた…。

ある朝、私の部屋に男の人が訪ねて来た。警察だった。絵に描かれた女性を見せ、もし心当たりがあれば、
申し出てほしいと言う。見せられた似顔絵は、見慣れない表情で、病んだような女の顔だった。
知らない名前の女がインクの滲んだ粗い印刷で大まかに図解説明されていた。

三日前、東京都港区で発見された全裸死体は… 死亡推定時刻、四日前の午前二時から、午前五時の間…
身の回りの品を一切所持しておらず、その上、顔面を殴り潰されているため、身元の確認に時間がかがったが…
身長… 体重… 年齢… 髪は赤毛を金髪に染めており、近年増加の傾向にあった外国人娼婦の中でも、
かなり有名だった一人で… 被害者はかって出産もしくは中絶の経験があり… 出身地… 本名… 
仲間内の愛称ヘレン… ……「ヘレン」! 彼女はモデルではなかった。

貧しい国から家族の生活を支えるために事情を抱えてやって来た外国人娼婦だった… 
マンションの管理人がヘレンの部屋を処分しなければならなかったそうだが、彼女の部屋にあった沢山の華やかなドレスの殆どは、
売り物にならない安物で、業者も引き取らず、ゴミとして出すしかなかった。

ヘレンは顔面を潰されて絞*れた上に、全裸でゴミ捨て場に捨てられていた。
顔が潰されているので、暫くは身元も特定できなかった。手口と状況から見て、
所持金目当ての犯行という疑いよりも、客とのいざこざから起きた犯行との疑いが
濃いという。これだけの無残な事件なのに新聞はたった数行の扱いだった。

…異国の地で独り寂しく*でいった女。あの夜、化粧っ気のないヘレンが呟いた一言。
「…これがあたしの普通(本当)の顔なのよ…」 
… ヘレン。二十七歳。死因・絞殺。目撃者なし、迷宮入り。………


22 Track No.774 :2021/11/15(月) 11:01:47.66

「エレーン」は実話が基になって作られた曲。コンサートツアー 
「Tour Special SUPPIN VOL.1」の中で実話が基に作られたことを明かしている。
中島みゆき著書「女歌」の中でも語られている。


23 Track No.774 :2021/11/16(火) 15:36:25.20

「なつかない猫」

「猫飼うようになったんだけど… うちの猫、全然なついてくれないの… こんなにも
好きなのに、猫がなついてくれない… 手を差し伸べても、跳び退るし… 撫でようとすると
手を掻い潜って身をかわすの」「しつこく構い過ぎじゃないの?」「そんなことないと思うんだけど…」
「あなたになんか興味いよ。と無関心を装う方が、意外と早く距離を縮める事にも繋がる事もあるの」

「それから、あんまり見つめてもダメよ。猫を安心させる為には、目線を合わせず、ゆっくり近づいて、
猫が逃げたり、嫌がらなければ、そのまま喉や首回りなど、喜ぶところを優しくなでてあげればいいのよ」

「怪我しても、誰も届かない場所でうずくまるだけ。犬好きの彼が来た時も、彼が撫でようとすると、
手を掻い潜って身をかわすし、手を差し伸べても、飛び去るばかりで、全然なついてくれないの。
「なつかねぇなこの猫と言いながら、それで彼も持て余してパチスロのコイン投げて釣っていたわ。

そのコインに興味を示したのか、近づいて来て鼻をクンクン匂いを嗅いでいたわ。彼も保護猫は
警戒心が強く、中々なつかないよと言っていたわ」「確かに猫が育ってきた環境も性格に影響する
からね。元々猫はなつきにくい生き物。特に野良猫などの虐待などの辛い経験があるとね…」

「ちゃんと、ご飯やおやつあげてる」「毎日ちゃんとあげてるわよ」「なら心配ないわよ。そのうち慣れて
なついて来るわよ。食いしん坊なお猫ちゃんほど、なついて来るわよ」「そうかしら… 」「そうよ」
「でも、何かとツンデレなの」「猫は元々ツンデレなのよ」

    ――――――――― 輩は猫である。というか、雌猫なのであたいは猫である。

ニャ、ニャ、ニャァ~ … ふにゃぁ~ ご主人様たちが、あくびが出る話をしている。
構って欲しいのはわかるが、あまり構われるのが好きじゃないのニャー …
ツンデレで悪かったニャー … 

仔猫だった野良猫の頃からよ。ずっとこんな風だったわ。可愛げのある猫仲間を
真似てみても真似は真似だニャー … いずれスグにバレてしまう付け焼刃よニャー …
あたいはあたいなのニャー … 猫は単独行動が基本なのだニャー … 

なつかない猫をおびき寄せようとコインを投げたご主人の彼氏。
犬とは違うだニャー … あいつの煙草の匂いが嫌だニャー … 
アイツは好かんニャー …  ニャロメ!

飼い主のご主人は、やたらとあたいと仲良くしたいあまり、あたいの後を
追いかけまわしたり、捕まえて無理に抱っこしたりするの嫌だニャー …

あたいが足元で顔をスリスリした時や、ご主人が帰宅するのを玄関で待ってくれた時、
ご主人が思わずテンションが上がり、嬉しくなって身振り手振り大きくなったから
逃げたニャー … 近づいて来るのを待てばいいだニャー … 

そう気が向いた時だけ、構って欲しいニャー … だからツンデレだと言われるニャー …
    ――――――――― そう猫はマイペースだにゃぁ~
  
 今日もパーソナルスペースを守りつつ… 湖よりも遥かに鎮まりかえった瞳で猫は見てる。


24 Track No.774 :2021/11/16(火) 15:45:10.45

>>23
16行目「吾輩は猫である。・・・」に訂正


25 Track No.774 :2021/11/16(火) 15:49:05.96

>>23
9行目「「なつかねぇな、この猫」と言いながら、・・・」に訂正


26 Track No.774 :2021/11/16(火) 16:08:33.90

>>23
下から6行目「ご主人が帰宅するのを玄関で待ってた時、」に訂正


27 黄砂 :2021/11/16(火) 20:42:50.34

秋子でしょ
未練だね 未練だね
あー震えてる
震えてる…懐かしいわ


28 Track No.774 :2021/11/17(水) 14:10:03.24

「それ以上言わないで」

波がざわざわ音を立てている。波打ち際に座るサーファーを眺めながら
僕らは街外れにある海へと来ていた。彼女とは浮気がばれて別れて以来の
久しぶりの再会だった。「あの子とはうまくいってるの?」「まあね」

波打ち際に座るサーファーが、ゆっくりと立ち上がり、沖へ出て行った。
サーフボードを脇に抱え、腹くらいまで浸かるところまで行くと、後はボートに乗って
スイスイと沖へと進んでいく。夏のシーズンが終わった海は静かだ。

平日の昼過ぎと言えば、海にいるのは散歩しているおじいさんやサーフィンを
楽しむサーファーくらいなものだ。人の声がしないだけで、世界はこんなに静かなのかと
海に来るたび思う。さっきから彼女と一言も会話がない。互いに海を見ていた。

「君は強い人だからいいね一人でも、だけど僕のあの娘は…」と言いかけて、
「…それ以上言わないで」と話を遮られた。僕が余計なことを言ったからだ。

彼女が少し寒そうにしたので、僕の上着を*羽織ってあげた。「ありがとう」と
一言言ってくれた。僕が余計なことを言うまでは、わりとスムーズに会話は弾んでいた。
世間話に花が咲いていた。

彼女とは浮気がばれて、喧嘩別れしてから久しぶりに会うけど、
こんな静かな海に来て海を眺めていると、何故か、不思議と、
人は本当の意味で優しくなれる気がする。


砂浜を二人で静かに歩いていると、僕らの足跡が波に洗われて消えてゆく…
ーーーーーーーーー そんな自然の情景を見ていると・・・

僕が彼女と一緒に歩んできた(一緒に過ごしてきた日々、時間)、
足跡(そくせき)が消えてゆく様に感じる…

何故か、不思議と僕の意識の中で海の音が遠のく… 抑えていたものが、溢れ出そうになる。。。

ーーーーーーーーー 彼女も同じ思いなのだろうか…

――― 波は静かに絶えず押し寄せてきて、海岸の砂をさらってゆく…


29 Track No.774 :2021/11/18(木) 13:57:13.55

「歌うことが許されなければ」

大量の難民がヨーロッパに向かう連日のニュースの中で、悲しいニュースが届いた。
一人の可愛らしい難民の男の子がトルコの砂浜で死体で見つかった。

湾岸警備退院がその幼い死体を気づかわし気に抱えている写真が世界中に報道された。

この隊員は自分の子供と同年代の子供の痛ましい死体にとても心を痛めたことを話していた。
幼い男の子の母親と姉妹も一緒に亡くなり、父親だけが生き残ったそうだ。
父親は自分が変わってあげたいと嘆いていた。それと同時に、このような悲劇が
繰り返さないようにと彼は重ねて訴えていた。

乾いた風に砂塵、砂埃が立ち、舞い上がる。
沙漠の中にある難民キャンプには、シリアからの難民3万人以上が暮らしていた。
広大な敷地に建てられたキャンプ。小さな家が連なりそれぞれの狭い住居に、それぞれの家族が暮らしていた。

難民キャンプで働くボランティアは、必ずしも難民の話す言語に通じていると言う訳ではない。
公用語である英語や身振り手振りでなんとか意思疎通を図っていた。

2014年から家族と難民キャンプで暮らすファティマと言う女の子と知り合った。
冬は風が吹き荒れ土埃が舞うため、多くの時間を屋内で過ごすと言う。
「私は大きくなったらプロの料理人になりたい」と言っていた。

トルコの難民キャンプにいる大好きな母親の元を離れ、
難民として命がけでギリシャへやって来た少年アーダムと父親は、
ギリシャに到着してすぐ、強制送還の可能性に怯えながら暮らしていたが…

何とか昨年、ドイツ入国した。未だ正式な仕事は見つからず、
フランクフルト市内にある難民収容施設内で通訳などをしながら
他の難民と共同生活をしていた。

――――――――― 9月のフランクフルトは、もう既に頬に当たる風が冷たかった。

少年アーダムはとても歌が上手い少年で、将来、オペラ歌手になることを密かに夢見ていた。

――――――――― 少年アーダムは、言葉も分からず住む場所も定まらない生活が続く…
突然移り住むことになったフランクフルトでの生活が始まった。


30 Track No.774 :2021/11/18(木) 14:44:24.41

>>29
3行目「湾岸警備隊員」に修正


31 Track No.774 :2021/11/19(金) 16:56:47.27

「時は流れて」

「オヤジ! いつもの頼むよ」
「あいよ! いつものだね」

異動が多い仕事の関係でこの街に来て早いもので、もう3年目になる。
ここの居酒屋は仕事帰りに、いつも立ち寄るようになっていた。

ここの居酒屋の雰囲気をカウンター越しでいつも楽しんでいた。
後方では若いOLのガールズトークに花を咲かせている。
「美咲ってさ、好きな人とかいないの?」
「いますよ。もちろん」
「えっ! 誰々? もしかしてさ、いけない恋?」
「違いますよ」「藤崎君はダメだからね」

「あいよ!海老天。いっちょ上がり」
俺の前に差し出される海老天。ここの看板メニューの一つでもある。

「はい!生ビールね!」
「あっ、どうも」
俺は軽く会釈をして生ビールのジョッキを居酒屋の主人から直接頂く。

運命の悪戯か、奇妙な巡り合わせで、なんと…
そんな居酒屋に、実は10年前に別れた彼女がカウンターから少し離れたテーブルで
ひとり酒に酔いしれていた事を知る由もなかった ―――――――――


32 Track No.774 :2021/11/19(金) 17:12:26.35

>>31
3行目「異動が多い仕事の関係で、この慣れ親しんだ街に戻って来て、もう1年目になる。」に訂正


33 Track No.774 :2021/11/21(日) 13:23:02.42

「トラックに乗せて」

タイムカードを押してトラックの始業点検を始める。
まず八輪あるタイヤの状態を見て回り、エンジンオイルの量をチェックする。

それから運転席に乗り込み、スピードメーターを開け、三日分のタコグラフを
装着した後でセルを回す。エンジン音を聞きながら給油所に向かい、オイルが
不足気味の時は適量だけ補充する。

ミーティングが終わり、集荷の終わりを知らせるアナウンスを合図に、
積み込み作業途中の運行者たちは追い込み作業に入った。出発と到着の準備が
同時に始まったプラットホームの上は、その日を締めっくくる一番慌ただしい
時間が廻って来た。

運転伝票を受け取った気の早いドライバーが、我先へと、出口に向かう中、
俺は慌てる素振りもなく事務所に向かった。

「本田、無茶な運転だけはするなよ。承知の上だろうが、中央道で何かあったら厄介だからな」
運行伝票の処理を済ませた田辺が俺の肩をポンと叩いた。

「大丈夫ですよ。田辺さん、安全運転指導者の俺に任せてください。法定速度を守りますのでご安心を」
俺はそう言うと笑顔で事務所を出て行った。

トラックのドアを閉め、クローランプが消えるのを待ってセルを回した。
力強い始動と共に軽快なアイドリングが始まった。乾いたディーゼル音が鳴り響く。

支店のプラットホームから次々に運行車両が離れたして行った。
俺はサイドブレーキを戻して、セカンドギアにクラッチを繋いだ。

エンジンが程よく温まった二tトラックは軽い身のこなしでプラットホームから離れて行った。

空を覆う雨雲は広範囲にまたがり、関東平野にまで続いて周期的に激しくなる模様とラジオから流れる交通情報が伝える。

途中、僅かな時間だったが、アメリカ映画ながらの小さなカバンを持ったヒッチハイカーの女性を
乗せる羽目になるとは思ってもいなかったのだった ーーーーーーーーー


34 Track No.774 :2021/11/21(日) 13:28:15.83

>>33
16行目「グローランプ」に訂正


35 Track No.774 :2021/11/21(日) 13:32:54.90

>>33
18行目「運行車両が離れ出して行く。」に訂正


36 Track No.774 :2021/11/21(日) 21:57:56.22

>>33
下から4行目「10tトラック」に訂正


37 Track No.774 :2021/11/22(月) 12:35:59.77

「ベットルーム」

「家に帰りたい」愛知県内の自立支援業者に預けていた長男から、母親に電話があった。
長男は1年前から業者の寮で他の引きこもりの人たちと共同生活をしながら、青果市場で
働いて自立を目指していた。再会した際は疲れ切った表情をしており、両親に
「共同生活は好きじゃない。働いてばかりだった」とこぼしていた。

自宅に戻った後は仕事を探すどころか、家事すら手伝わないようになった。父親は
「成長して帰ってきたかと思ったら、全く変わっていなかった」と嘆き、長男にもう一度
寮生活に戻るように説得。母親は「あなたの働いている姿が見たい」と励ました。

再入寮を目前にした同年12月末、長男は家出した。その六日後、有明海に浮かぶ遺体が
地元漁師によって発見された。警察署に駆けつけた母親は泣き崩れ、父親は「息子を追い込んでしまった。
生きてさえいてくれれば、それでよかったのかもしれない」と全身が凍り付き後悔した。
つい最近、こんな新聞記事に目が留まった。

何年か前だったか、フジテレビ系列の「ザ・ノンフィクション」という番組で、虐め、非行、親の虐待、引きこもり、
薬物依存などで苦しんでいる子供たちを無償で預かり、更生に導いている愛知県岡崎市にある西居院というお寺の和尚。
救った子供たちは20年間で1000人以上にのぼるという。このようなサンクチュアリか、アジールという聖域、
(駆け込み寺、避難所、保護施設)もそれで更生できればいいが、その施設が預かった者を食い物にしているケースもある。

心の傷や色んな事情を抱え苦しんで自分を守る殻、殻に閉じこもる者を無理にそこから引き離しても良い結果は生まれない。
本人が抱えている心の問題を解決できない限り無理なのだ。それが心の中のベットルームなのかもしれない。

     ーーーーーー 堅固な石垣で囲むベットルームはあなたをあなたから守るベットルームだ 

年齢では大人なのだが、精神的にはまだ自己形成の途上にあり、大人社会に同化できずにいる人間。
これをモラトリアム人間と言う。競争社会でストレスが多く、何かと他人と自分を比較し、自信を失いやすい現代。
近年その傾向は益々強くなっている。他人と比べる必要もないし、自分を卑下する必要もない、自分に自信を持ち
自分本来の姿を取り戻す為の猶予期間と言うのも必要だろう。

 ーーーーーー 最終的に本人が納得できる生き方が出来るようになればいいのではないだろうか…


38 Track No.774 :2021/11/22(月) 12:44:27.27

>>37
タイトル「ベッドルーム」に訂正
文章の中のベットルーム×
     ベッドルーム〇


39 Track No.774 :2021/11/22(月) 14:50:41.84

>>37
下から9行目「中には、その施設が預かった者を食い物にしているケースも稀にある。」に修正


40 Track No.774 :2021/11/23(火) 13:33:24.69

「たとえ世界が空から落ちても」

「一緒に暮らしていたと言っても、籍は入ってませんでしたから…
それにあの人の事、私良く知らないんですよ。この子が出来た時、籍だけは入れて
くれって頼んだんですけどね。俺はお前なんかと終る人間じゃないって、
いずれ大きくなる人間だからって… 自分勝手で横暴な人でした」

「*れる前、特に変わったことを言っていませんでしたか、例えば、近いうちに、
大金が入るとか」「ええ、言っていましたよ。いい金づるを掴んだからもう貧乏とは、
おさらばだって… でも、私と知り合ってから、ずっと言ってましたからね。そんな事を」

俺は*れた札付きのワルでチンピラ詐欺師、土屋勝利の聞き込み、身辺調査をしていた。たった一つの事実が、
俺をあまりにも乱暴で強引な推理に駆り立てていた。土屋の死体のワイシャツに微かに付着していた口紅と
地元有力者新村家の娘、輝美が常用している口紅が一致したのだった。
どう見ても二人は別の世界に住む人間だった。

「須藤!例の事件の事な。んだけど…」「あ、松本さん。それが一向に、糸口が掴めず、弱っているんですよ。
その上、あの事件に関しては、妙に、上の人間がハッパをかけてきましてね。二週間以内に早期解決しろと言う
特別命令が出ましてね。現場はすっかり焦っています」「早期解決の特別命令?」俺は須藤刑事に
新村輝美の事を話し、彼の調査に協力した。

そして二週間後、ついに我々は土屋と新村輝美の接点を見つけ出すことに成功した。
二人が同じホテルに連れだって通っていた事実を掴んだのだった。ところが我々が
二人の接点を掴んだ翌日、一人の暴力団員が土屋*の容疑で逮捕された。

「何!? 犯人が逮捕された!?」俺は驚いて、須藤刑事に尋ねた。「ええ、逮捕と言っても正確には自首して来たんです。
土屋と関係がある新興暴力団です」「それで?」「調査本部は解散です。上は大喜びですけどね。奴は犯人じやない。
松本さんと一緒に新村輝美を追った俺の正直な俺の感想です」「しかし、調査本部が解散した以上、身動きが取れんな。
お前も、次の事件に回されるだろうしな」「俺は松本さんと調査続けるつもりです。上からは猛反対を受けましたが、
俺は上を怖いと思った事は、一度もありませんから、…本当に怖いのは事実を隠されることですから」「よく言った」

とは言ったものの、我々二人に出来ることは、新村輝美の身辺を洗うことと、彼女自身の行動を探ることぐらいだった。
新村邸前に車を止めていると「世田谷警察のものですが、用がなければ車を移動させてもらいませんかね」
「あ、いや、私は警視庁捜査一課の刑事で…」「わかっている!刑事だからって人に迷惑かけていいってことにはならんぞ!」

二週間後、須藤刑事が慌てて俺の家に来た。「どうした青い顔して?」「昨夜、新村輝美が、ホテルの部屋から
投身自*ました。遺書は見つかりませんでしたけど、ホテルのメモ用紙に{土屋は私が…}と書かれていました」
「そうか…」「松本さん教えてください。土屋のどこに惚れたんですかね?」「多分… 土屋が、騙して強請るまで、
昔の土屋を演じていたんだろう…」


41 Track No.774 :2021/11/23(火) 13:49:52.25

>>40
12行目「須藤!例の事件の事なんだけど…」に訂正
21行目「俺の正直な感想です」に訂正


42 Track No.774 :2021/11/23(火) 14:59:14.25

>>40
下から11行目の末尾「奴は犯人じゃない」に訂正


43 Track No.774 :2021/11/23(火) 21:20:38.80

「最愛」

時代は1984年頃。私は港に来ていた。
大好きだった彼があの人と乗り込む船が出航する港に来ていた。
彼があの人と二人でクルーズ船で船旅に出ることを私にこっそり
友人が教えてくれた。

あの頃は今と違い、まだ携帯とかスマホがない時代。ポケベルさえ一般に普及する前の話。
彼とあの人が乗船する豪華客船クルーズ号は船内の部屋の電話にメッセージランプが点灯し
伝言を受け取れる仕組みになっていることを知る。一番好きな彼。彼以外に考えられない。
けれど、私は覚悟を決めた。


46 Track No.774 :2021/11/24(水) 10:04:34.52

>>43
1行目「私は横浜港に来ていた。大好きだった彼があの人と乗り込む船が出航する横浜港。
みなとみらい地区は祝日ということもあってカップルや家族連れなど多くの人々で賑わっていた。
彼があの人と二人でクルーズ船で船旅に出ることを私にこっそり教えてくれた。」に修正


47 Track No.774 :2021/11/24(水) 10:15:14.69

>>46
私にこっそり友人が教えてくれた。


48 Track No.774 :2021/11/24(水) 10:42:11.27

>>46
>>43の1行目から4行目までの修正